プラトンが記した伝説の古代文明「アトランティス」。高度な文明を持っていながら、地中海か大西洋のどこかで海中に没したという伝説の島です。
そのアトランティスは地中海に浮かぶサルデーニャ島なのではないかという研究結果が発表されました。
アトランティス――海に沈んだ超文明の大陸
アトランティスは、古代ギリシャの哲学者プラトンの記した史書『ティマイオス』と『クリティアス』に記述されている伝説の島です。プラトン自身も伝説の又聞きで、元はエジプトの神官の間で伝承されていた伝説が元になっています。
その真偽やアトランティスとみられる場所は諸説あり、考古学的な議論となっています。
記述によると、紀元前9600年ごろ、海の神ポセイドンを信仰するこの島は高度な技術を持っており、大西洋を広く支配していたとされています。この年代は最終氷期の直後であり、イラクで近年発見された世界最古の都市よりも古いため、むしろ考えにくいものです。
アテナとの戦争に敗れて敗北した後、島全体が一晩で海に沈んだとされています。
サルデーニャ島には突如放棄された高度な文明があった
セルジオ・フラウ氏は、サルデーニャ島にあった文明が大津波によって海中に沈み、アトランティス伝説になったと考えています。
フラウ氏は6月に12人のイタリア人科学者と共に、サルデーニャ島を訪れました。
彼は、アトランティスが大西洋のどこかに存在していたという従来の見解を否定しています。
サルデーニャ島からは金属器や磁器、壺、オイルランプなどの品が出土しており、「海に沈んだポンペイ」とでも言うべき特徴を備えていることに注目しました。それはある日突然街が放棄されたことを示唆しています。
この島には紀元前16世紀から12世紀に建てられた『ヌラーゲ』という巨石建造物が存在しています。巨大な玄武岩で建てられた要塞の周りを迷路のような壁が並んでおり、これはかつて村落だったと考えられています。
円形要塞の中央にはドームが建てられ、その周囲を4つの塔が囲んでいました。塔の地下には食料庫を備えていて、そこでは年間を通して気温が12℃に保たれています。
ヌラーゲの他の複合集落からはオイルランプや金、銀、宝石で作られたの装飾品、石灰岩の祭壇などが発掘されています。
このようなことから非常に高度な文明が栄えていたことが伺えますが、これらの建造物は紀元前1175年に突然放棄されてしまいます。
巨大津波で島が放棄された記述が残っていた!
ローマ時代の作家プルタルコスは、島民は高い土地の上に避難したか、海を渡って中央イタリアに逃げたと記しています。
これは巨大な津波が島を襲ったことを示唆しています。
古代エジプトのラムセス3世の寺院碑文には、他国民は地震を見て、彼らの土地が飲み込まれる様が書かれています。古代エジプトの海の神は大きな波を起こし町や村を破壊したのです。
フラウ氏と研究者たちは、この他国民はサルデーニャ島の住民を指していると考え、この記述は事実に基づいていると信じています。
エジプトに逃れた島の住民たちはファラオに仕える傭兵をしていたのです。
彗星が津波を引き起こした!?
地球物理学者のステファノ・ティンティ氏は、1980年代まで地中海で津波が発生し、沿岸を破壊したことはないと信じられていましたが、現在は覆っていると言います。現在では2500年前までの間に350回の津波が起きていることが分かっています。
彼はまた、彗星の接近が500メートルの大津波を引き起こす可能性について指摘しています。これがサルデーニャ島を襲いヌラーゲを破壊したのです。
「彗星が秒速20キロで海面に衝突すれば、波は1秒間に4倍から5倍のサイズに膨張するでしょう」と彼は語ります。
彼の推測を証明するものは現在のところありませんが、学者たちは彼のアイデアによって、なぜサルデーニャ島が放棄されてしまったのかを説明できるかもしれないと考えています。
ユネスコ世界遺跡センターの代表者のAzzedine Beschaouch氏は「フラウ氏の研究は、ヌラーゲ文明が古代世界の中心点の1つであったと示している」とし、「研究者たちは、この島の過去の不可解な現象に対して、科学的、歴史的、文化的、政治的、感情的な実体を付け加える必要がある」とコメントしています。
参照:dailymail