体が崩れ落ち、遺体は光り続けた…ラジウムガールズの悲劇

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1898年、マリ・キュリーと夫のピエールが発見したラジウム元素。
日本ではキュリー夫人として知られているこの女性は研究中の放射線被曝によって命を落とすのですが、彼女の死後もしばらく、放射線のプラス面ばかりがクローズアップされ、「被曝」という負の側面が知られたのはずっと後になってからのことでした。
負の側面が知れ渡る前、20世紀初頭から半ばにかけて、ラジウムはあらゆる商品に使われていました。
ラジウムが放つ光の美しさや、その輝きに人々は健康への効能や滋養強壮、生命力を与えることに期待した人々は、ラジウムを薬品や化粧品にまで取り入れました。
今では考えられないことでしたが、当時は健康のために、ラジウムを入れた水を飲む人も多くいたのです。
そんな誤ったラジウムの扱い方によって起きた悲劇的な事件を紹介します。

女性の自立の裏で…

出典:検索サイト2017-2019

20世紀初頭、まだ女性が仕事を持つことは難しかった時代。
先進国であるアメリカでは、いち早く女性の独立運動が活発化し、多くの女性が手に職をつけたいと考えあるようになっていました。
そして、1920年頃にアメリカの時計工場では手先の器用な女性を女工として採用するようになりました。
中でも、発光するラジウム塗料を時計の文字盤に塗るという仕事についた女性、ラジウムガールズは、他の仕事の給与3倍の給与水準ということもあり、多くの女性にとって憧れの存在となっていました。
女工達は、筆の先を細くするために舐めるように指示され、出勤のたびにラジウムを体に取り込んていったのです。
ラジウムガールズたちはその放射線の影響で、暗闇で体から光を放つようになりました。
しかし、工場側は「危険性はない」と説明したため、むしろラジウムの光はステータスとなっていました。
ダンスフロアで光り輝くことで注目を集め、笑顔を明るく見せるために、ラジウム塗料を歯に塗るラジウムガールさえもいました。
しかし、彼女たちの体調に異変が起きるのは時間の問題でした。

ラジウムガールズに起きた異変

出典:BUZZ FEED JAPAN

1922年、一人のラジウムガールズの体に恐ろしい異変が起きました。
彼女の体は見る間に腐り落ちていき、しまいには顎全体が落ち、彼女はその年に死亡したのです。
その他にも各地のラジウムガールズに恐ろしい症状が現れ始めました。
歯が抜け、顎が肥大し、骨が崩れ落ちた人、巨大な腫瘍が身体中にできた人。
起き上がれないほどの酷い貧血と倦怠感の末に亡くなっていく人。
流産や死産を繰り返す人、臓器からの大量出血で失血死する人…。
ラジウムガールズたちは自身の労働環境が体を蝕んでいることに気づき、会社を相手取り訴訟を起こします。
しかし、会社は「ラジウムガールズたちは会社から金をせしめようとしている。」として彼女たちを貶め始めました。
当時は致命的な性病だった梅毒でも体の一部が崩れ落ちる、倦怠感などの症状があることから、
「彼女たちは自身のふしだらな生活によって梅毒に罹患した」というイメージを拡散したのです。

知られ始めたラジウムの危険

出典:BUZZ FEED JAPAN

会社の多くは、訴訟を故意に長引かせることにより、ラジウムガールズ達が死ぬのを待っていたとも言われるように、この問題は会社側の悪質な偽装工作により、なかなか表に出ることがありませんでした。
しかし、1928年、ラジウム時計を作っていた最大手、ラジウム・コーポレーションの創設者の一人で、ラジウム入り塗料の発明者でもあるサビン・アーノルド・フォン・ソチョッキー氏が、被曝で死亡したことによりようやく事件は動き出します。
会社の多くがラジウムの危険性を隠蔽し、危険な仕事であることをわかった上で、女性達を働かせていたことが明らかになったのです。
実際、腕時計工場の男性従業員らは、鉛のエプロンで体を守り、ラジウムを扱う際は金属製のトングを使用していたのですが、
ラジウムガールズ達にはいっさい防護がありませんでした。
また、「ラジウムが健康にいい」という俗説がデマであり、ラジウムは危険であることを多くの会社が理解していましたが、空前のラジウムブームに気を良くし、その事実も隠していたのです。

ラジウムガールズがもたらしたもの

出典:BUZZ FEED JAPAN

ラジウムガールズは、被曝による死と健康被害の恐怖の中で、女性の立場工場と安全な職場環境、労働者の権利を求めて戦いました。
中には、宣誓のための腕が上がらず、半分寝たきりの状態で裁判に参加したラジウムガールもいました。
自身の悲惨な病状をあえて公開することで、社会の理解を求めたのです。
そして、1938年の春、ようやくラジウムガールズたちは勝訴を勝ち取りました。
現代社会の企業に対して労働者が訴訟を起こし、強制労働による損害の賠償を請求する権利は、彼女達の苦しみの上に確立されたものといっても過言ではありません。
この事件がきっかけで、アメリカの労働安全基準は明確に向上したのです。
ラジウムガールズの功績を讃え、その死を弔う像はかつて、ラジウム時計工場が多くあったイリノイ州オタワにひっそりと建てられています。
事件から100年近く経っていることもあり、多くの人々はラジウムガールズの悲惨な歴史を忘れ始めています。
しかし、「負の遺産」はまだ終わっていません。
ラジウムガールズの墓地からは未だに高い放射能が観測され、彼女達の骨は光り続けているのです。








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