チリで続いていたナチスの蛮行、コロニアディグニダ

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ナチスがヨーロッパ各地に強制収容所を作り、ユダヤ人を収容、虐待、強制労働していたことは誰もが知っていることですが、戦後、チリで元ナチス党員がコロニアディグニダと呼ばれる入植地を作り、拷問、虐待、殺害が続けられていたということは意外に知られていません。

コロニアディグニダとは…

アドルフ・ヒトラーの熱狂的な信者であり、元ナチス党員のパウル・シェーファーが、児童による性的虐待によりドイツを追放されたあと、チリに移住し、1961年にキリスト教バプテスト派の指導者らと設立したコロニアディグニダ。原始キリスト教時代の共同体をモデルに作られた入植地でした。
ここには1960年代から1980年代の最大時で300人程度のドイツ人とチリ人が居住していました。
清潔で秩序立った施設と、整備の行き届いた美しいメルセデス・ベンツのバス、可愛らしいブロンドの美少女を前面に押し出すことで、周囲のチリ人達には良い印象を与えていました。
しかし、現実はそれらのイメージからかけ離れたものでした。
聖書をシェーファーの都合のいいように曲解し、強制労働や虐待、殺害、非人道行為が横行していたのです。

家族という概念の破壊

シェーファーは入植者をコントロールするために、彼らが団結したり、財産を持つことを禁じました。
聖書にある「持ち物を共有する」という部分を、曲解し強制したのです。
これにより、入植地内で出産した母親は、出産直後に子を取り上げられ、コロニアの保母により育てられます。
親子や兄弟などの家族愛を感じることなく育てられた子供達は冷たく、無気力、無感情に育ち、コロニア内にある学校で短期間、最低限の教育を受けた後、6~7歳から毎日休みなく、無償の強制労働と処罰、性虐待に晒されたのです。

恐ろしすぎる管理体制と虐待

シェーファーによる児童への性的虐待は、儀式化、組織化、ルーティン化され、6歳頃から日常的に行われていました。
家族という概念を奪われていた子供達は、大人に助けを求めるできず、シェーファーの要求を拒否した者には電気ショックや、食事を与えないなどの拷問がくわえられました。
反抗的な態度をとったものは薬を打たれ沈静化されるのは当たり前、外の世界との関わり、情報を遮断する意味から、テレビや電話、カレンダーさえも禁止され、住民はバイエルンの農民の服を身に纏い、ドイツの民謡を歌いながら働くことを強制されました。この様子は全く事情を知らない外の人々には清潔で明るい住民と写っていたのです。
中では人体実験が行われていたという告発もあるのにも関わらず、コロニア内はチリの法律さえ適用されない状態でした。

なぜバレなかったのか…?

これほどの残虐行為がこれほどまで長きにわたって行われていたのはなぜだったのでしょうか?
それは徹底した管理体制に加え、一度入れば2度と出られない異常なまでの警備体制が関係しています。
有刺鉄線に高度センサーが搭載されたフェンスや探照灯、望楼、バンカーと呼ばれる地下施設だけでなく、ロケットランチャーや戦車などの本格的な兵器を所持していました。
また、当時チリはピノチェト政権と呼ばれる軍事独裁政権が力を持っていたため、政権に逆らう者や、批判的な言動をする者はコロニアに送られていました。そのため、チリ政府もこの施設の人権侵害の隠蔽に加担していたと言われています。

権力筋との深いつながり、そして現在も…

シェーファーはコロニアの開設当初から、地元の要人達を招き、もてなすことを欠かしませんでした。
美味しい料理と凝ったお菓子、美しく手入れされた庭園、天使のような子供達によるオーケストラやコーラス、明るいドイツ民謡などで、あたかも地上の楽園かのような印象を与えることで、権力者の心を掴んで行きました。
無料の車の修繕や、美しい風景の中でのバケーションなどを無料で謳歌できたのも、内部の人々の強制労働があったからなのですが、こうした接待によりチリ国内の裁判所、議会、警察などに強力なネットワークを築き上げました。
こうしてコロニアで起きた虐待や非人道行為の告発は、もみ消されて行ったのです。

2010年に心不全で死去し、天寿を全うしたシェーファー

最も驚かされるのはコロニア・ディグニダは、現在はビジャ・バビエラと名前を変え、今現在もホテルとレストランというレジャー施設として現存している点です。
2005年にシェーファーが逮捕されてからは「新しく生まれ変わった」と主張してはいますが、依然としてこの入植地は続いているのです。
それも、隠蔽に協力していたピノチェト政権のお抱え弁護士、エルナン・ライン氏の強力な保護を受けており、過去にコロニアで行われたに拷問、児童への性的虐待、政府に背いた人々が強制収用、行方不明になった件など全てを握り潰し、1996年の強制捜査の際も、強力な弁護を敷くことで、この施設を守りきっています。
なんと現在、エルナン・ライン氏はチリの司法・人権大臣に任命されており、コロニアにおけるこれまでの人権侵害捜査の総責任者となっているのです。
このような人物が司法のトップにいる限りは、コロニアで起きた全ての出来事が明かされることはないでしょう。
ですが、2015年にはハリーポッターシリーズで知られるエマ・ワトソン主演でコロニアに関する映画が公開されるなど、徐々にこの蛮行を伝えようという動きは広まっています。
事件が風化する前に、全てが明らかになるといいですね。








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