土星の衛星にある「血の痕跡」とは?専門家を困惑させる、テテュスの氷表面に現れた不可解な赤い線
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土星探査機カッシーニが、土星の氷の衛星テテュス表面にミステリアスな赤い線を発見しました。それは長さが数百マイルにもわたるものでした。
この不可解なアーチ状の、土星の衛星においては通常あり得ない色を有している「血の痕跡」が探査によって現れたのです。
天文学者たちは、この現象に困惑を隠せず、いくつかの可能性について言及しています。それは、化学不純物とともに氷が露出したものであるか、また、テテュス内部からガスが噴出した結果である、といったものです。
この「赤い痕跡」は突然現れた
彩度が強調されたモザイク画像では、この大変に奇妙なアーチ状で、赤みがかった線は、土星の氷の衛星であるテテュスの地表面を横切っています。その細く、地表で湾曲している赤い線は、2、3マイルの幅しかないものの、長さは数百マイルにも及んでいます。カッシーニのカメラで捉えられたその画像には、通常あり得ない赤色が映し出されていました。
これが確認できるカラー映像は、4月に撮られたもので、アーチ部分をはっきりと確認するには、この北部エリアへの適当な照明と観測の条件が整っている必要がありました。土星系が過去数年の間、その北半球が夏に移動したので、その北緯部分がより照らされることとなりました。
その結果、ほんの2、3マイルの幅しか持たないアーチが、初めて、はっきりと識別されたのです。
「私達が新しい画像を見ていたとき、その赤いアーチは突然現れたのです」とヒューストンのLunar and Planetary Institute(月及び惑星研究所)の、カッシーニプロジェクトにも参加している科学者、ポール・シェンク氏は語っています。
「赤色」は土星の衛星では極めて珍しい
土星にある氷の衛星テテュスのモザイク画像が示すのは、衛星の裏側の半球の範囲なのです。テテュスは土星の引力によって固定されています。そのために、常に惑星に向かっている面と、その反対側の面があるのです。
カッシーニのカメラによる画像の色範囲を拡張したものにおいては、通常の画像では確認できてもかすかにしか見えない、その成分とテクスチャーの違いが現れます。これは、テテュスにある巨大なすり鉢状クレーター、オデュッセウスが三日月状に照らされた中に、ひときわ輝いて現れたところを捉えたものです。
「これがどれくらい広範囲かは、驚くべきです」カッシーニの科学者たちにとっては、このアーチの出現の原因とその赤みがかった色はミステリアスなものです。
この赤みがかった色の成分が、不純物で満たされた氷、または内部のテテュスから表面に噴出した物質であるという可能性については調査中です。
また、それらは解像度に潜んでいる画像の破損と関係があるものかもしれません。
土星の衛星ディオネにある2、3の小さなクレーターを除き、このような赤味がかった色というのは、土星の衛星では非常に珍しいのです。
多くの赤みがかった現象は、木星の衛星エウロパの地質学的に若い表面に起こります。
「赤いアーチは地質学的に新しいに違いありません。なぜならそれらはクレーターのような古い地質を横切っているからです。しかし私たちがそれがどれくらい新しいものなのかを知ることはできません」とカッシーニの画像作成科学者のポール・ヘルフェンシュタインは言います。
「もしこのアーチの表出が、氷の表面だけにある薄いものであれば、比較的短時間で消えてしまうかもしれません」
カッシーニのチームは現在、これについての追跡観測の計画を進めています。そしてそれは高解像度で、今年の後半に実施されるかもしれません。
「11年間軌道を周回した後に、カッシーニは、想像を超える発見をし続けるのです」こう語るのはカリフォルニア州、パサデナのNASAジェット推進研究所の科学者リンダ・スピルカーです。
「私たちは、これらの変わった模様の原因と成分を特定することができるかどうかを確認するために、11月にテテュスの赤いアーチの一つで、さらにより詳細な観測を計画しています」
テテュスは直径1,066kmの小さな土星の衛星で、土星から294,660kmの軌道を周っています。
参照:dailymail