研究者たちは驚きを込めてこの船を幽霊船と表現している。
2014年12月5日、米・ハワイ大学と海洋大気庁の調査チームがハワイ・オアフ島沖の海底で幽霊船を発見したと発表した。
第2次世界大戦終結後に沈められた元米軍籍の海底ケーブル敷設船「カイルア」で、操舵輪からマストまで、ほぼ無傷の状態で発見。
このカイルアが発見された海域には、当時世界最大の潜水艦で、「潜水空母」の異名を持つ旧日本海軍の秘密兵器『伊400』型潜水艦も沈んでいる事をイギリス・ガーディアン紙などが報じている。
この幽霊船は現役時代、太平洋戦争の裏方としても活躍していた
当初は「ディケンソン」と言う名前でハワイを拠点に1941年までミッドウェー島やファニング島付近で、海底通信ケーブルの修復や資材運搬に活躍していた。
日本軍による真珠湾攻撃が行われた後は、ミッドウェー島から避難民を乗せハワイに帰港したという。
その際、日本軍の潜水艦に追尾され、それを米軍艦が追い払う事もあったという。
後に米軍に接収され、「カイルア」として、終戦まで潜水艦防御用ネットや通信ケーブルの敷設を行った。
そしてほぼ無傷の状態で発見される
この「カイルア」の調査では、パイシーズ深海探査艇が使って調査が行われた。
パイシーズは、2002年に旧日本海軍の特殊潜航艇「甲標的」を発見するなど、多くの実績がある。
凄いぞパイシーズ。
操縦士のテリー・カービー氏は「パイシーズで大きなソナー・ターゲットに近づくのは、いつもスリリングだ」と語った。
『カイルア』発見時に最初に視界に入ったものの一つは、「無傷で残っていたクラシック・スタイルの操舵輪」で、「船首から船尾にかけての上部甲板の構造物はよく保存され、魚雷のダメージは全く見られなかった」
この「カイルア」はアメリカ政府の所有物となり、連邦財産として保護されている。
今の所、引き上げや修復の予定はないそうですが、海洋大気庁の海洋遺産プロジェクトの責任者、ジェームズ・デルガド氏は「我々はこの残骸をアメリカ合衆国国家歴史登録財に推薦しようと思っている」と語っている。
カイルアの近くには旧日本海軍の秘密兵器も
「カイルア」が沈んでいたオアフ島から20マイル沖の海域には、旧日本海軍の「甲標的」のほか、大型潜水艦「伊400」型2隻も沈んでいるとのこと。
「伊400」の残骸は昨年8月の調査で発見されており、同型艦の「伊401」も2005年に発見されている。
「伊400」型は、1960年代に核ミサイル搭載可能な潜水艦が開発されるまで、世界最大の潜水艦だった。
防水を施した格納庫に専用設計の「晴嵐」水上攻撃機3機を搭載し、“潜水空母”の異名を持っていた。
浮上して同機を射出し、敵に発見される前に潜水するという運用計画のもと、日本海軍の秘密兵器として開発された。
しかし「伊400」「伊401」は、アメリカ本土やパナマ運河への攻撃が計画されていたが、既に戦局は悪化しており、目立った戦果を挙げることなく終戦直後に米軍に拿捕されてしまった。
その後、米軍の魚雷で破壊され、オアフ島沖の海域に沈んだ。
この撃沈の理由は、「米軍が旧ソ連に技術が流出する事を恐れたため」だったとのこと。