そのどちらでもなくこれは南米パタゴニアに住んでいた先住民族、セルクナム族の正装です。
日本のブログメディアではヤーガン族(ヤマナ族)として紹介されていますが、正しくはセルクナム族(Selknam)のようです。
南米大陸の最南端、パタゴニア地域のインディアンは三部族がいました。その中でも最南端に住んでいたのがヤーガン族とセルクナム族です。この写真はOnaというセルクナム族の村の成人式の様子で、年がら年中この格好をしていたわけではなく、これはごく限られたときだけの正装だった模様です。
ウルトラマンや仮面ライダーの怪人のような素晴らしい造形センスをしています。
セルクナム族は織物を知りませんでしたが、完全に裸だったわけでもなく、毛皮一枚を身につけていて、毛皮の中が裸でした。
彼らは服を着る代わりに身体に動物の脂を塗りつけていました。裸の方が焚き火で早く身体を温めることができると知っていたからです。
彼らの住んでいたパタゴニアの入江は南極圏ですが比較的温暖で、最低気温は5℃ほどと比較的暖かったようです。また、パタゴニア名物の殺人的な強い風は入江を囲む山に阻まれ、風も少なかったため、裸でも問題なかったのです。
彼らは船の上にも焚き火を持って行き暖を取りながら漁をしました。これによってセルクナム族のいる入江に差し掛かった船からはたくさんの焚き火が見え、入江が火事で燃えているように見えたようです。
ガラパゴス諸島で進化論の着想を得たダーウィンもセルクナム族の村を訪れており、「彼らは同じ世界に住む仲間とは思えない」という言葉を残しています。
「服を着たせいで滅んだ民族」「宣教師が衣服を伝えたが、洗濯の習慣が無かったため免疫のないバクテリアが繁殖し滅びた」と日本では伝えられていますが、実際には他の先住民族と同じくスペイン人によって滅ぼされました。
虐殺をまぬがれたセルクナム族も他の先住民族と同じく混血による同化が進んでいき、文化も失われてしまいます。純粋なセルクナム族の最期の生き残りは2004年まで生きていました。
しかし、彼らの現代にも通じるペインティングのセンスは海外の人々も引きつけており、「Selknam」で画像検索をすると様々なセルクナム族ヒーローのアート画像を見ることができます。
やはり、かっこいいですね。
参照:Wikipedia/Selknam(es)